【報告】第三回BreakTalks「テーマ:インクルーシブな場づくり」(ゲスト日比秀則さん)を開催しました。(2021.10.26)

10月26日(火)、S.C.P.Japanでは第三回となるBreak Talksを実施しました。「インクルーシブな場づくり」というをテーマに、任意団体「ウォーキングサッカー・イン・ザ・サイレンス」で活動され、聴覚障がいをもつ当事者でもある日比秀則さんをゲストにお招きし、聴覚障がいやデフサッカー、ウォーキングサッカー・イン・ザ・サイレンスの活動についてお話していただきました。さらには日比さんのお話をキッカケに、「インクルーシブって何だろう?」「インクルーシブな場づくりの工夫」などについても参加者の積極的な発言から意見交換する機会となりました。

まず、今回のゲストである日比さんが聴覚障がいをおもちだからというだけでなく、参加者のリアクションがないとスピーカーはちょっと寂しいねということで、「聞きながら頷くなどのリアクションを取ってみましょう。」や、簡単な手話の共有、そしてUDトークというシステムを活用してZoomに字幕表示をしながら進めることが主催者から説明されました。もちろん、今までのBreak Talksと同様に、手話ボランティアの方々による手話通訳も行われました。

聴覚障がいについて

前半のゲストトークでは、日比さんがご自身の聴覚障がいについて、「聴こえない」「聴こえにくい」とはどういうことなのか?ということを、言葉だけでなくイラストなども交えて紹介してくださりました。

聴覚障がい者とは、耳の聞こえない方、聞こえにくい方のことです。日比さんご自身は、「先天性感音性難聴 105dB(デシベル)」という症状になるそうです。日比さんの「聴こえにくい」という感覚の説明は、下記のようなイラストも交えながら行われました。日頃「聴こえている」なかで生活しコミュニケーションしている参加者にとって、すぐにすべてを理解することは難しくても、「聴こえない、聴こえにくいとは、こういうことかな?」と想像をすることができるよう、とてもわかりやすくご説明いただきました。

日比さんご自身は、幼少期から成長の過程で、特別支援クラスなどもない環境の中で過ごされたそうです。学校生活では、一番前の真ん中の席に座り授業を受け、発表は免除などの配慮はあったようですがほとんどの授業が、教員の話している内容がわからないまま進んでいたそうです。当時は、発表の免除は「ラッキー!」ぐらいに考えていたそうですが、人前で話をすることに関して成功体験も失敗体験もすることなく、社会に出てから人前で話すことを初めて経験し、難しさを感じたということもお話してくださいました。「BreakTalksのゲストを務める今もとても緊張しています。」と素直なお気持ちを参加者の方に伝えてくださいました。

発声に関しては、小学校1年から6年生まで「ことばの教室」に通われ、言語聴覚士の先生に発声の仕方を学ばれたそうです。それでも、例えば「自動車」と発声して人に上手く伝わらない時は、「車」という言葉に言い換えるなどして伝える工夫をされていることも教えてくださいました。

手話は、小中高と手話を覚える機会のないまま過ごされて、大学生になってから同じ障がいの方と出会い、手話を覚えるきっかけになったというエピソードもお話くださいました。

デフサッカーの魅力

デフサッカーは、「音のないサッカー」とも呼ばれ、健聴者同士の試合と比較すると試合中の発声はほとんどありません。だからこそ、「目に見える情報だけで判断し、ゲームを進める」というのがデフサッカーの魅力の一つでもあると日比さんは教えてくれました。例えばディフェンスラインは、何も声をかけ合うことなく無言でラインを揃えてオフサイドトラップをかけるなど具体的な事例もご紹介くださいました。

ウォーキングサッカー・イン・ザ・サイレンスの活動

日比さんは、長年、サッカーに携わっており、2019年に日本サッカー協会のスポーツマネジャーズカレッジ(SMC)サテライトを受講したことをキッカケに、「ウォーキングサッカー・イン・ザ・サイレンス」という活動を企画し、2020年1月に任意団体を設立。東京と横浜で月に1回ほどのウォーキングサッカーの活動や、月に1回オンラインにて「手話べり」という活動を行っています。

【ウォーキングサッカー・イン・ザ・サイレンスのHP】https://wsits2020.com/

ウォーキングサッカー(ウォーキングフットボール)は、性別や年齢に関わらず、初心者・経験者のスキル差も気にすることなく行えるスポーツです。ここ3~4年で日本ではインクルーシブ・スポーツとして注目されるようになりました。(日本ウォーキング・フットボール連盟 https://jwfl.amebaownd.com/
日比さんも「一人ひとりに合ったコミュニケーション方法(声を出すコミュニケーションが苦手、難しいなど)」に関して、それぞれが自主性・主体性を持って、楽しみながら理解するきっかけを作ることを目的にウォーキングサッカーを活用しようと考えたそうです。

東京での「ウォーキングサッカー・イン・ザ・サイレンス」の活動では、他のウォーキングサッカーの活動と異なる点があります。それが試合時のルールです。1ゲーム目2ゲーム目は音や声を出すことを禁止とし、最後の3ゲーム目には音や声を出してもOKとします。1ゲーム目2ゲームでの体験を経て、3ゲーム目では一人一人が主体的に聴覚障がい者が孤立しないよう考え行動(プレー)します。「一人ひとりに合ったコミュニケーション」って何だろう?どうすれば、聴こえない人も聴こえにくい人も、聴こえる人も、声を出すことが苦手な人も、コミュニケーションを取ることができるのか?をウォーキングサッカー・イン・ザ・サイレンスを通して体験することができるのだと感じました。その他、横浜での活動では、障がいのあるなしも年齢もごちゃ混ぜになって行うインクルーシブなウォーキングサッカーも展開しています。

インクルーシブな場とは?

前半のゲストトークを受けて、後半は「インクルーシブって何だろう?」「インクルーシブな場づくりの工夫」などを参加者の方が積極的に意見交換をすることで交流する時間となりました。

インクルーシブな場を提供するために、参加者を「誰でも」と表現することで誰でもが参加しやすくなる場にならないという課題が共有されたり、困っている人が「困っていることに気づき、助けてほしい」と周りに助けを求められる環境が大事だよねという議論になったりと、いろんな立場の参加者が意見することができました。

日比さんからも、参加している子どもは「ただいるだけ」で楽しそうなのに、周囲の人はお世話をしようとしすぎてしまう時があると活動における課題の共有もありました。

最後に、日比さんから「インクルーシブって言葉だけだと難しく感じますよね。私は『インクルーシブ=お互いさま』だと思っています。」という発言があり、その言葉がとっても腑に落ちるような感覚を皆で感じながら、第三回BreakTalksは、時間いっぱいまで盛り上がって終了となりました。

S.C.P. Japanは、BreakTalksを通して今後も多様なゲストや様々な活動を紹介し、多様な人々が集まる場となることで、多様性や共生社会についてより深く考えるきっかけを作りたいと考えています。

最後に本企画を実施するにあたり、参加を快くお引き受けいただきました日比さん、運営面で動いてくださったボランティアスタッフ、手話通訳の皆様、そしてご参加いただきました参加者及び関係者の皆様に心より感謝申し上げます。

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