6月15日(火)、S.C.P.Japanは、第1回目となるBreakTalksを実施しました。今回はプライド月間である6月の開催にちなんで、今年4月に同性パートナーの存在を公表した現役ラグビー選手の村上愛梨(むらかみ あいり)選手をゲストに招き、「性の多様性とスポーツ〜誰もが自分らしくプレーできる環境の重要性と共生社会のために一人ひとりができることを考える〜」をテーマに開催しました。
村上愛梨選手は、東京のラグビーチームである横浜武蔵野アルテミ・スターズに所属し現在はラグビー選手として活躍していますが、2015年までは東日本地域リーグの秋田銀行でバスケットボール選手としてプレーしていました。2019年には、ラグビー15人制日本代表として国際試合も経験しています。今年4月、代表クラスの現役選手としては初めて、同性パートナーがいることを公表し、SNSを通して同性婚の自由をはじめとするLGBTQに関する発信を行うとともに、悩みを抱える当事者の声に耳を傾け、自身のプラットフォームを活用した積極的な活動を行なっています。
前半のゲストトークでは、S.C.P. Japanでインターンをしている折目が、インタビュー形式で村上選手のこれまでの経験や現役アスリートとしてカミングアウトに至った想い、今の社会やスポーツ界に求めることなどについて思いを伺いました。
・カミングアウトをすることを決心したのは?
子どもの頃から、セクシャリティを隠すことやセクシャリティで悩むことに疲れていたため、ずっと隠すことをやめたいと思っていました。現在所属しているラグビーチームに加入した時に、コーチやチームメートがアットホームな雰囲気で自身を受け入れてくれたこと、そして現在の同性パートナーがセクシャリティに関してオープンでありカミングアウトに賛成してくれたこと、怪我により日本代表を離れたことで代表選手時代に比べてSNS上で個人の発言が述べやすくなったことなどのタイミング重なってカミングアウトを決意しました。
私はたまたまカミングアウトをしましたが、LGBTQ当事者のカミングアウトは個人の判断で行うものであり、カミングアウトに関する考え方も多様です。そもそもカミングアウトをしなくてはならないのがおかしな事であり、セクシャリティに関わらず、恋人やパートナーのことを話すことが出来るカミングアウトが必要ない社会が理想と考えています。
・セクシャリティで悩んでいた時のことと当事者へのメッセージ
高校時代LGBTQ当事者であるという理由で周りからのいじめを受けたり拒否されたりするなどのつらい経験がありました。そんな時、母親や学校の友人が支えてくれました。また、現在所属するチームのコーチが温かく受け入れてくれる方でそのコーチの雰囲気がチームメートに伝わり、チーム全体の雰囲気が温かく、自身が安全な場所にいるということを感じることが出来ました。私もそのように雰囲気を作れるような人になりたいと思っています。いじめにあっていた時はLGBTQであることは自分の弱点だと思っていましたが、今は個性の一つだと思っています。
セクシャリティについて悩むことがある時、LGBTQ当事者と話すことを勧めます。以前に比べて当事者コミュニティも大きくなり、当事者と繋がる機会は増えたように思います。私自身、つらい時相談にのってもらう機会がなかったため、自分が相談を受ける立場としてセクシャリティで悩む子どもたちの力になりたいと思います。現在SNSを通じて無料相談を行っているので、お気軽にご相談ください。
後半は、村上さんと参加者でディスカッションを行いました。今回のBreak Talksには、LGBTQ を取り巻く状況や問題についてこれまで馴染みがなかった人、スポーツに興味がない人、スポーツ競技の指導に携わる指導者の方など、様々な考えやご経験を持つ人たちが参加しました。
参加者から、「LGBTQ選手を応援するにはどのような方法があるのか、村上さんはチームに所属してからチームの温かい雰囲気を感じたとのことだが、LGBTQ当事者にとってチームに入る前はチームの雰囲気やLGBTQ当事者に対する考え方は分かりづらいのではないか、そんな中で指導者として自分が指導しているスポーツ団体がLGBTQ当事者に共感していることや、チームメートとして積極的に受け入れるスタンスであることを示すにはどのような方法があるのか、普段の生活の中で当事者と接するうえでどのような配慮が必要か」など、たくさんの質問がありました。これに対して、村上選手が自身のこれまでの経験を共有したり、考えを説明しました。また、参加者同士でも積極的に意見を交わしたりすることで、参加者がLGBTQや多様性に関して考えるとともに、他者の考えを知る機会となりました。
最後に、村上選手はメッセージとして、LGBTQ当事者の方たちに寄り添うことを示す「アライ」という立場や取り組みについて紹介し、LGBTQであってもなくても「アライ」が増えることでカミングアウトが必要のない世界に繋がるのではないかとコメントしました。また、自身がいじめ、拒否にあっていた子ども時代の思いから、LGBTQだけでなく、悩みを抱える子どもたちはたくさんいるはずであり、大人たちが子どもに手を差し伸べることの重要性を伝えました。
S.C.P. Japanは、BreakTalksを通して今後も多様なゲストや様々な活動を紹介し、多様な人々が集まる場となることで、多様性や共生社会についてより深く考えるきっかけを作りたいと考えています。
多種多様な方々20名にご参加いただき、参加者及び関係者の皆様に心より感謝を申し上げます。
最後に本企画を実施するにあたり、参加を快くお引き受けいただきました村上選手、そして運営面で動いてくださったボランティアスタッフ、手話通訳の皆様に心より感謝を申し上げます。